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IMFのSDRに人民元が絶対に入れない理由

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中国政府は人民元の国際化を徐々に進める意向を持っています。その一つが、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)へ人民元を採用させることです。IMFは途上国や金融危機に陥っている国などへ、資金を融資することがありますが、その際はこのSDRという単位が一つのベースになります。

IMFのSDR・各通貨の割合グラフ2015年時点で、IMFのSDRは米ドル・ユーロ・英ポンド・日本円の4つの通貨から構成されています。2015年現在の各通貨の比率は、米ドルとユーロがおよそ40%、ポンドと円が10%程度という構成になっています。

このSDRの通貨バスケットに人民元も入れろ、と中国は要求しているのです。

中国政府の目的は、世界最大の金融機関であり、米国の金融支配の象徴でもあるIMFに自国通貨を盛り込ませることで、世界経済への影響力を強めようという狙いが理由です。現状でも中国は、すでにアメリカに次ぐ巨大マーケットに成長しており、世界経済との連動性は高まっています。今や中国がくしゃみをすれば、世界中の国が風邪を引くような状態です。

しかしこれだけでは、世界の覇権を狙う中国にとってはまだまだ不十分です。特に人民元は、中国政府の一部である中国人民銀行が、自由な資本移動を規制する事で完全に為替レートをコントロールしている、事実上の「固定相場性」を敷いています。このことは、欧米先進国から多くの批判を受けています。このアキレス腱を突かれないためにも、中国は人民元をSDRに組み込ませて、世界の主要通貨の一部であるという既成事実を作りたいのです。

しかしアメリカは、当然こういった中国政府の思惑は見抜いているので、IMFのSDRに人民元を組み込むことなど絶対に容認しないはずです。そして、管理通貨である人民元がSDRには相応しくないというだけでなく、アメリカには拒否する裏の理由もあるので、更に入れないハードルが高いのです。

実はIMFは中立な機関ではなく、アメリカが世界経済を事実上支配するために設けた、恣意的な意図に満ちた営利機関なのです。アジア通貨危機や中南米諸国の債務危機の際には、IMFは資金を融資して「金儲け」してきました。単に金貸しとして儲けるだけでなく、各国に市場開放や規制緩和を迫ることで、米国企業の現地進出を後押しする面もあります。アジア通貨危機で財閥解体が行われ、米国資本に食い物にされた韓国が典型例です。

人民元は管理通貨な上、敵対国にIMFの利権を与えるわけがない

アメリカにとってIMFというのは、グローバルにまたがる巨大な利権の源泉なのです。そんな美味しい利権の一部に、軍事的には完全に敵対国である中国の人民元を盛り込むことなど、絶対にあり得ない話でしょう。これが、人民元がSDRに入れない最大の理由です。

ですから中国は、IMFに変わる国際金融機関として、AIIB(アジアインフラ投資銀行)やBRICs開発銀行など、幾つもの金融機関の発足を掲げてきました。これらは純粋な国際開発銀行としての役割だけでなく、アメリカの世界経済支配に対して牽制・プレッシャーをかけるという裏の意味もあります。今後、順当にIMFのSDRに人民元が入らなかった場合には、AIIBやBRICs開発銀行を通じて新興国経済の利権に付け入り、アメリカから経済の覇権を奪う計画こそが、中国の真の思惑です。

そして2015年8月、中国が禁断の一手=人民元の切り下げを行いました。中国は不動産バブルの悪化などで景気が急減しており、景気対策として人民元の為替レートを安くしてきたのです。しかしこの人民元の切り下げは、アメリカに人民元のSDR入りを拒ませる口実を与えた事になります。意図的に為替レートをコントロールしている人民元は、変動相場制である他の4つの通貨と対等に扱うに値しないことは、誰の目にも明白ですから。

いずれにせよ、IMFのSDRに人民元が認証されるなんて、あり得ない未来だと言えるでしょう。もし万が一、人民元がSDRに入ったとすれば、その時は裏で、IMF利権など比較にならないほどの巨大な密約(人民元の自由化を明文化させる、など)が、米中間で交わされているはずです。

 










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