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中国版プラザ合意(元の大幅切り下げ)で円高不況が起きる?

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中国経済はシャドーバンキング問題が表面化した2013年以降、大きく減速しています。2000年代には10%を越えていた実質GDP成長率が、7%を割り込みそうな水準にまで落ち込んでおり、経済崩壊の危機に瀕しています。中国政府が取れる最大の経済対策は、人民元を大幅に切り下げる事ですが、欧米先進国の反感を買うのは必至です。

そこで可能性が浮上している事として、アメリカなどG7諸国と話し合いを付けた上で、人民元の大幅切り下げを行うという方法です。丁度、アメリカが1985年にG5共同でドル安為替介入を行わせた「プラザ合意」と同じ手法です。

プラザ合意当時、アメリカ経済は深刻な不況でした。しかし2度のオイルショックによる高インフレが原因で金利が高止まりしており、世界からドル買いが集中して為替が一方的なドル高を招き、その事がより一層不況を深刻化させる、負のスパイラルに陥ってました。インフレリスクのため、金融緩和(利下げ)による景気対策が行えず、八方塞がりになった米国政府が取った行動が、世界各国に為替介入を強要し、高金利なままドル安誘導を行い、景気浮揚を図るという手法でした。
(※右写真;出典=WikimediaCommons 出所=Agência Brasil)

当時もアメリカ経済は世界最大のマーケットであり、米国経済の不況は諸外国へも悪影響が大きい状況でした。この事を盾に取り「アメリカが不況だとお前達も困るだろ?」と脅しを掛けて、世界にドル安協調介入を強制したのがプラザ合意の内容です。

翻って2015年現在の中国は、プラザ合意当時のアメリカと環境が酷似しています。中国が利下げで経済対策を行うことには、限界があります。中国では激しい不動産バブルが起きており、利下げを行えば低金利を背景に不動産投資が活発化して、よりバブルが進行するリスクが伴うからです。

そのため、中国にとって最も有効な方法は、通貨安誘導による輸出増大で景気を浮揚させる事です。しかし2000年代より、中国の人民元は欧米各国から不当に割安であると批判されており、2005年から「仕方なく」徐々に切り上げ(=元高誘導)を行ってきた歴史があります。今、中国人民銀行が独断だけで元安誘導を行えば、世界から非難が集まることは必至です。

そこで、G7やら米中首脳会談など、公式の交渉で「中国経済が崩壊すれば世界にも悪影響が広がるでしょ?」と、人民元安誘導することを各国に容認させることが有効な手法だと考えられます。いわば『中国版プラザ合意』です。こうすれば、中国は輸出産業が潤うので経済浮揚を図れます。


クリントンの悲劇再来?日本政府は断固拒否を!

一方でとばっちりを喰らうのが、我々日本です。1985年のプラザ合意の際も、急激な円高不況(輸出減速)が起きて、海外への投資が減った分だけ日本国内での金余りを招き、株と不動産のバブルを生みました。今もし、中国版プラザ合意が起きて元安=円高が起きれば、アベノミクス円安で景気が上がりつつある所に冷や水が浴びせられ、再び円高不況が再来するリスクが高まります。

2015年8月に、中国は人民元の切り下げを行いましたが、下げ幅は10%にも満たない小幅なものでした。しかしこれは、中国政府が世界の反応を伺う為の観測気球だ、と見るのが正解です。数%程度の切り下げでは、景気回復は望めません。本当はもっと大幅に、おそらく半値レベルまで人民元を切り下げたいというのが、中国政府の本音でしょう(※注1)。

このままじりじり切り下げを続けて批判がなければ問題ないですし、各国の反発が強いのであれば、公式の場で人民元の切り下げを容認させる「中国版プラザ合意」を行おうという算段でしょう。オバマ後の米大統領が、共和党候補で決まれば、情勢は流動的です。しかし、親中派として知られる民主党ヒラリー・クリントン氏になれば、交渉によって人民元切り下げを容認する可能性は十分あると予想されます。何せヒラリーの夫=ビル・クリントンは、1994年の人民元大幅切り下げを容認し、日本経済を不況のどん底に陥れた前科があるのですから。

中国経済の不況は、元を辿ればシャドーバンキングによる無駄な不動産開発であり、中国人自身が招いた自業自得の不況です。日本としては、円高不況再来が確実視される中国版プラザ合意(人民元の大幅切り下げ)など、絶対に容認できない暴挙です。何とかアメリカに圧力を掛け、絶対に阻止せねばなりません。

中国経済の不況は、不動産バブルを弾けさせ、シャドーバンキングを破綻させて、経済をハードランディングさせることが最善です。もはや中国の不動産バブルが虚構である事は明白ですから、バブルは早めに潰して一からやり直すことが、中国の健全な経済発展には不可欠です。

 

※注1;1994年には1米ドル=5.72元から8.72元へと大幅に切り下げられている。これを機に中国経済(貿易黒字)の躍進が始まり、日本は円高不況が到来した。それを容認したのが当時の米国大統領ビル・クリントン。









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